建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

7-6 隅角部の亜鉛だまり対策

 溶融亜鉛めっき施工で亜鉛・空気流出用開口をスカラップでなく円形孔とした場合、角部に亜鉛だまりが発生しやすく、その美観について指摘を受けることがあります。

 JASS 6表9.2「検査項目と合否判定基準」やJIS H 8641(溶融亜鉛めっき)の検査項目には亜鉛だまりに関して記載がありません。溶融亜鉛めっきの主な目的は、錆に対する防錆性能を上げるためと理解しておりますが、亜鉛だまりは美観を損ねるので除去作業を行うよう指示されることがあります。除去作業の際、狭隘部の健全なめっき皮膜を傷つけることもあるので、除去作業はしない方法とするための説明方法を教えて下さい。

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A

 梁端など3方向を囲まれた部分をきちんとめっきするためには亜鉛・空気流出用開口が必要でスカラップがその役目を負っています。しかし、スカラップの場合、めっき割れが発生することがあるため、めっき時の割れをなるべく減らすためにノンスカラップと亜鉛・空気流出用開口を丸孔による組合せが提案されJASS 6にも記載されています。

 この形式で割れ発生を減らすためには孔の大きさと端部からの孔の離隔距離がポイントでなるべく角部から離すのが効果的ですが、そうなるとご質問にあるように角部に亜鉛だまりが発生することがあり、また、空気がうまく抜けず不めっきも発生します。下図に亜鉛だまりの一例を示します(文献1)。

 ただ、この部分はめっきされていますので防錆上・実用上の問題は無く、外観・美観上の問題です。

 めっき鉄骨は露出することが多いため美観も大事です。しかし美観をよくしようとしてめっき層を傷つけてしまっては本末転倒ですのでバランスを考えた処置が必要です。

 亜鉛だまりも含めためっき後の出来栄えについてはなるべく早めに関係者と協議し、合意しておく必要があります。場合によってはスカラップ形式とする方法もありますが、その場合は監理者の承認を得るとともに、めっき後の割れ検査を入念に行う必要があります。

参考に、JIS H 8641:2007「溶融亜鉛めっき」の『3.2 めっき表面に見られる諸現象』に記述されている「 C」たれ 」を次に示します。

参考文献

1.建築鉄骨における溶融亜鉛めっき割れの発生とその防止手法

溶接学会2007年11月 研究成果報告会

2.日建連 ここに注意A―10―7 めっき溜りの発生

3.「溶融亜鉛めっき工法」の手引き~亜鉛溜りと空気溜り(不めっき)について~

日本溶融亜鉛鍍金協会 技術・技能検定委員会 平成20年1月

4.JIS H 8641:2007溶融亜鉛めっき

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