建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

6-2 アンカーボルトのJIS改正について

構造用アンカーボルトセットのJIS規格が改正されたということですが、どのような内容なのか、また、構造用アンカーボルト自体の規格の内容、構造特性について教えてください。

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A

構造用アンカーボルトは、ねじ部降伏に先立って軸部が降伏することを保証した塑性変形能力に富んだ製品で2010年にJIS規格となりましたが、JIS規格が2015年12月に改正されました。その主な内容は、以下の通りですが、改正されなかった構造用アンカーボルトの規格の内容、構造的に主要な点についても以下に述べます。

1.構造用アンカーボルトに関する規格の改正点

2015年12月における規格改正では、JISB1220(ABR)とJISB1221(ABM)の二つに分かれていた規格をを統合して新しいJISB1220:2015構造用両ねじアンカーボルトセットに改訂された点が大きな改正点でありますが、そのほかABRボルトについてねじの呼びM18を追加し、また、ボルトセットの表面処理として溶融亜鉛めっき(HDZ35)を追加したことです。

2.構造用アンカーボルトのJIS規格(JISB1220:2015)の主要な内容

1) ボルトセットの構成

ボルトセットの構成を図1に示します。この図に示すように両端にねじ部を有する直線状のボルト1本、ナット4個、平座金1枚で構成されています。

図1 ボルトセットの構成
図1 ボルトセットの構成

2) ボルトセットの種類

セットの種類は、ボルトのねじ加工方法およびボルトの材料によって区分し、表1によっています。

表1-セットの種類
表1-セットの種類

3) ボルト、ナットおよび座金の基準寸法(dはボルトの呼び)は、以下の通りです。

ボルトの呼び:ABRアンカーボルト  M16,M18,M20〜M48
       ABMアンカーボルト ABM400:M24〜M48、ABM490:M24〜M100
ボルトの長さ:25d以上  ねじ部の長さ:3d以上
ナットの高さ:0.8d
座金の厚さ:M16〜M20 4.5mm、M22〜M27 6mm、M30〜M50 8mm
      M56〜M64 9mm、M68〜M95 12mm、M100 16mm
座金の外径:2d

 

3.構造用アンカーボルトの使用鋼材と製作上の特徴

構造用アンカーボルトは、図1に示したように基本的に長い定着長を持った直線状の鋼棒の両端にナットを締め付けるためのねじ部を加工しただけの単純な製品です。しかし、一般にねじ部の加工方法には転造と切削があります。それらのねじ部の加工方法の違いと使用する鋼材について以下に述べます。

転造でねじを加工する場合にはねじに相当する部分をねじ下径とした棒鋼を転造機にかけて加工します。この場合、転造機によってねじの山となる部分は、もとの軸径から外側に押し出され、谷となる部分ではもとの軸径から内側に凹まされることとなります。このような加工によってねじが形成される結果、ねじ径は、もとのその部分の軸径から外側に膨れたものとなります。例えば、M20のねじ部は外径が20mmですが、加工する前の軸径は、18.20mmです。このような加工によってねじ部の断面積と軸部の断面積は5%程度しか違いません。

通常のねじ加工では、軸部の径とねじ部の径を同じとするため、このような加工上の影響を考えてねじとなる部分をねじ加工前に削り加工したり、絞り加工してねじ下径とすることが一般的です。しかし、このような加工を加えるとねじ部近傍が硬化する可能性があります。そこで、ABRアンカーボルトでは、軸部を予めねじ下径となるよう精密転造したSNR材の棒鋼を用いてねじ部となる部分に何ら加工を施さずにねじ加工を行うことによってボルト軸部の塑性変形能力を確保しています。

一方、ねじ部を切削加工するABMアンカーボルトでは、通常のようにねじの呼び径(例えばM20)を持ったSNR材の棒鋼(20mm径)を用いてねじ部を切削加工するため、ねじ部の断面積は、軸部断面積の約75%程度となります。このアンカーボルトでは軸部降伏をねじ部降伏に先行させるため、この点を考慮してボルト材の降伏比が0.75以下のもののみを使用することとし、さらにねじ部の断面欠損率を25%以下とするためにねじ形状を通常の並目ねじから細目ねじとしています。細目ねじの断面欠損率は、ねじの呼びによって多少異なりますが、大体15%から12%です。

このようなねじ加工を施した構造用アンカーボルトのねじ部と軸部の関係を写真1に示します。

写真1 各種ボルトの軸部とねじ部
写真1 各種ボルトの軸部とねじ部

4.構造用のアンカーボルトの構造特性

3.で述べたような鋼材とねじ部の加工方法を採用した構造用アンカーボルトは、ねじ部降伏耐力が軸部降伏耐力を充分上回っているため、ねじ部で降伏が生じたあとねじ部または軸部で破断が生じるまで軸部において非常に大きな塑性変形が確保されています。その様子を示したものが図2です。これは全長900mmのABR490 M36とABM490 M36のアンカーボルトを破断するまで引張った時の軸部に生じた応力度と軸部の歪みの関係を示したものです。ねじ部の加工方法の違いによって軸部破断までに生じる歪み量は、ABRアンカーボルトではABMアンカーボルトの約2倍となっています。しかし、大地震時に露出柱脚に生じるアンカーボルトの歪みは3%程度と考えられており、その点から考えるとABM、ABRアンカーボルトとも十分な塑性変形能力があるものと考えて問題はありません。

図2 アンカーボルトの応力度-ひずみ度関係
図2 アンカーボルトの応力度-ひずみ度関係

5.JIS規格を満たすアンカーボルトの建築基準法上の位置付け

構造用アンカーボルトの建築基準法における位置付けは、現在、法的に見た場合必ずしも明確なものとはなっていません。

すなわち、建築基準法では、第37条(建築材料の品質)において建築物の基礎、主要構造部に使用する建築材料は、第一号(日本工業規格に適合するもの)または第二号(指定建築材料ごとに国土交通大臣の認定を受けたもの)の条件を満たすものであることが定められています。

アンカーボルトは、主要構造部に使用する建築材料の1種ですが、法37条における指定建築材料とはなっていません。そもそも指定建築材料に、「高力ボルト及びボルト」は入っていますが、アンカーボルトという項目はありません。構造用のアンカーボルトの規格が制定された時、この点についての建築指導課の考え方は、「ボルト自体は、JIS規格材であるSNR材の棒鋼を用いており、その両端にねじ加工を施したものであるため、指定建築材料の「鋼材」と考えれば特に問題はない。アンカーボルトに使用するナット及び座金は、指定建築材料の「高力ボルト及びボルト」に規定されているJIS規格品の条件を満たすものであれば問題はない。したがって、この規格に規定されたアンカーボルトは、法的に問題はないものと考える。」というもので、このような根拠から構造用アンカーボルトは、法的に問題はない製品であると判断されています。

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