建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

5-12 HTBを支圧接合で使いたい

現在の建築基準法では高力ボルトは摩擦接合および引張接合のみを規定しており、支圧接合は対象とされていません。本当に高力ボルトを支圧接合に使えないということでしょうか。

今、私たちが関与しているプロジェクトのボルト接合部において高強度の支圧接合用ボルトを用いたい箇所があります。告示には仕上ボルトとして「4.6」「4.8」「5.6」「5.8」「6.8」のみ基準強度が与えられていますが、どうも市場に流通しているのは「4.6」「4.8」のみで、その上は「8.8」になるそうです。「8.8」は告示に規定されていませんし、大臣認定を取得していないので 指定建築材料ではないため、建築構造物に使用できません。

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A

ご指摘のように、現在高力ボルト(以下 HTB)は、支圧接合として使用することは、法的に認められていません。

このように規定されているのは、以下の事情によります。

2000年施行の建築基準法改正の際に、HTBをせん断型の接合法として使用することが検討されましたが、以下の理由でその使用は認められませんでした。

1.摩擦接合と支圧接合との差は、① HTBに初張力を入れるか入れないか、② ボルト孔をボルト径+2mmとするか1mmとするか(なお、この点については、法的にはこのように決めてあっても現場でその差が守られる保証がありません)。③ 接合面の表面処理を行うか否かです。これらの点は部材製作、現場施工の実施と施工管理の点でコスト的にも実務面でも大きな差が生じます。

2.摩擦接合として使用する場合と支圧接合として使用する場合の許容耐力は、後者の方がはるかに大きい。

3.上記の事情を考えると、両者の接合法をいずれも認めた場合、単純に接合部の耐力のみを考えた点と施工管理の点から支圧接合の方が圧倒的に有利となり、構造体の変形性状を考慮しない場合は、ほとんどのHTBの接合部が支圧接合として利用されるようになることは明らかであり、従来厳しく管理されてきた摩擦接合が衰退し、設計面、施工面での混乱が生じます。

4.摩擦接合と支圧接合では、構造物としての剛性、地震時に生じる建物の水平変形量にかなりの差があり、摩擦接合の方が構造的には優れていることは明らかです。しかし、通常の構造設計ではその点を十分検討して構造体としての使用性能、安全性を考慮することが少ないのが実情です。

 

なお、現在唯一HTBがせん断型の接合として使用されている例がJIS型のターンバックルブレースの羽子板金物とガセットプレートの接合部です。ここでは、接合面に表面処理をせず、HTBに所定の初張力を入れないで使っており、ボルト孔径もボルト径+1.5mmとしていて、高力ボルト接合の基本性能から見て多くの点で問題があります。しかし、ターンバックルの接合部として考えた場合、ターンバックルは締めてあり、接合部では引張力に対して高力ボルトは、はじめから完全な支圧状態にあり、ブレース材が引張力を受けた場合、構造上問題は生じません。一方、圧縮力を受ける場合にはブレースには力が作用しませんので、全体的に見て、構造的に問題が生じる可能性はありません。このような事情からターンバックルブレースのJIS規格は、建築基準法における指定建築材料となっていて、一般に広く使用されています。しかし、法的な面からみると上記の点には問題があります。そのため、国土交通省ではその点をどう解決するか現在検討している状況です。しかし、上記した理由から一般的には、HTBを無条件で支圧接合として使用することは、認められませんので、何らかの対応を採ることとなるでしょう。

ただし、HTBではなく、強度を落として6T(6.6)のボルトを支圧接合で用いることは法的に可能です。その場合、以下の条件を守ることが必要となります。

1.ボルト接合としての建物の規模制限(軒高 9m以下、張間 13m以下、延べ面積 3,000m²以下)を守ること

2.ボルト孔は、ボルト径+1mm以下とすること

3.戻り止めをすること

なお、時間とお金がかかりますが、プロジェクト単位で大臣認定を取得して、支圧接合で使用することは、可能です。

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