建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

4-30 完全溶込み溶接から隅肉溶接への変更の検討

下図のような、□100や□125の小径角形鋼管とダイアフラムやトッププレートおよびベースプレート等との溶接部に、レ形開先による完全溶込み溶接の溶接記号が記載されている場合があります。裏当て金等の加工が困難なため、全周隅肉溶接に変更する提案はできるでしょうか。

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A

角形鋼管とベースプレート・通しダイアフラムの溶接部に隅肉溶接を用いることは可能です。この場合,角形鋼管に生じる応力に対して隅肉溶接部の耐力を確保する必要があります。通常、全周隅肉溶接となります。これについては、当協会SASSTのホームページ、鉄骨Q&A、1-9および4-20を参照して下さい。

質問にあるように、特に、小断面で板厚が比較的薄い(板厚12mm以下)部材の場合に隅肉溶接を適用することは製作上の困難さが減り、また製作コストの低減が大きく図れると考えられますので、隅肉溶接の採用は有意義といえます。

しかし、完全溶込み溶接を隅肉溶接に変更する場合は設計を再度行う必要があり、設計コストも増加することになります。したがって、このような小断面で板厚が比較的薄い部材に対しては、設計段階にて隅肉溶接を適用する情報提供が必要と思われます。

以下に、隅肉溶接接合部に関する構造検討例を示します。

なお、この検討例では、日本建築学会の指針1)に基づき前面隅肉溶接継目の耐力を側面隅肉溶接継目の耐力の1.4倍として計算していますが、建築基準法施行令で規定される溶接継目の許容応力度にはこの割り増しはないので、適用にあたっては注意が必要です。

【角形鋼管-ベースプレート接合部 検討例】

角形鋼管の断面は□-125×125×6(R=2t)であり,鋼種はSTKR400である.ベースプレートの鋼種はSN400Bとする。

1) 接合部に生じる応力Mが角形鋼管の降伏曲げ耐力Myと同等の大きさであると想定した場合の曲げモーメントに対する検討

角形鋼管の断面係数 Z=103cm3

角形鋼管の降伏曲げ耐力 My=103×23.5=2420kN・cm=24.2 kN・m

角形鋼管の塑性断面係数 Zp=122 cm3

隅肉サイズ S= 9mm

有効のど厚 a= 0.7S = 6.3mm

有効長さ  ℓ=125mm (全周隅肉溶接のため柱幅を有効長さとする)

隅肉溶接部の断面2次モーメント

隅肉溶接部に角形鋼管の降伏耐力と同等の曲げモーメントMが生じると想定した場合,

ここで判定に用いる応力度 1.4 は 文献1)に示されている前面隅肉溶接継目の耐力に基づく。

2)終局時の曲げモーメントに対する検討

角形鋼管の塑性断面係数 Zp= 122cm3

角形鋼管の全塑性曲げ耐力 Mp= 122×23.5=2867kN・cm=28.7kN・m

隅肉溶接接合部の最大曲げ耐力 

1)および2)の検討より、隅肉接合部に関する検討について、降伏時の曲げモーメントおよび終局時の曲げモーメントについて安全であると判断できます。

一般に鋼板を両面隅肉溶接で接合する場合、鋼板厚の0.7倍を隅肉サイズSとすることが慣用されています。角形鋼管の板厚が6mmのとき、板厚の0.7倍は4.2mmとなります。片面隅肉溶接のときには両面隅肉溶接の2倍の隅肉サイズSが必要であると考えると8.4mmとなり、この例で設定している隅肉サイズS= 9mmと対応しています。

【文献1)に示されている隅肉溶接継目の単位長さ当たりの耐力算定式】

:隅肉溶接継目の単位長さ当たりの降伏耐力

:隅肉溶接継目の単位長さ当たりの最大耐力

:有効のど厚

θ:作用応力方向に対する隅肉溶接継目の角度(θ=0のとき前面隅肉溶接に相当する)

Fy:接合される母材の降伏強さ

Fu:接合される母材の引張強さ

【参考文献】
(一社)日本建築学会「鋼構造接合部設計指針」第3版、p.69-70、2015.6

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