建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

3-25 小サイズH形鋼梁端の組立て溶接長さは短くてよいか

小サイズのH形鋼片持ち梁の端部フランジを完全溶込み溶接とした場合、裏当て金の組立て溶接は所定長さを確保できなくてよいのですか。

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A

小サイズのH形鋼がバルコニーなどの支持材として使用される場合を想定した質問と解釈して回答します。

このような梁部材は、H-250×125×6×9 またはH-200×100×5.5×8が一般的なようです。これらの梁端をJASS 6 に示された規定を守って完全溶込み溶接としようとすると、裏当金の組立てに使う隅肉溶接の長さは、前者で規定ぎりぎりの40mmで、溶接部の施工精度を考えるとショートビードになる可能性があり、後者では規定値より明らかに短い29mmとなります。

また、このような溶接部を完全溶込み溶接とすると、開先加工や超音波探傷検査が必要となり、その手間とコストもかかります。一方、このような梁は、ラーメン構造の大梁と違って大地震時でも作用応力は小さく、応力的な面からではなく、変形制限によって部材断面が決まる場合が多いはずです。

以上のような状況を考えると、このような梁端部の溶接には完全溶込み溶接ではなく、隅肉溶接とする方が適していると考えられます。溶接接合部を保有耐力接合とするには、隅肉溶接のサイズは、1.24t(tフランジ厚)となり、t=9mmの場合は11mm、t=8mmの場合は10mmとなります(日本建築学会の鋼構造設計規準では、「隅肉溶接のサイズは、接合する板厚以下とする」との規定があるが、鋼構造接合部設計指針ではこの規定はありません。また、法的にも隅肉溶接のサイズに関する規定はありません。従って、上記の隅肉溶接のサイズの規定は、守らなくても問題ないものと考えます。)。しかし、このような梁を保有耐力接合とする必要はないのが一般的です。実際に梁端に作用する応力は、簡単に計算でき、そのようにして計算して隅肉溶接の必要サイズを決定すれば、保有耐力接合とした場合に比べて遥かに小さなサイズで十分であることが判ります。隅肉溶接に関しては、開先加工や超音波探傷検査も必要ではなく、脚長の測定と外観検査で検査は十分です。

以上の状況を考えると、梁端の溶接は、常に完全溶込み溶接でなければならないという一部の構造設計者の固定観念を払拭し、状況に応じて合理的な溶接継ぎ手を選択することとなれば、鉄骨製作の合理化、コストダウンに繋げられるものと考えられます。ファブサイドから構造設計者にこのような事実を伝えることも必要ではないかと考えています。

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