建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

1-2 異径継ぎパネル部の種類と注意点

 コラムの異径継ぎパネルゾーン用の部材製品が販売されています。各製品のどれも品質安定をうたい文句に宣伝しています。これまでの板継ぎ方法では、かつての日の字柱時代同様、問題ありと指摘されていますが、どう大変なのか、詳細に説明してください。

▲質問一覧に戻る


A

 通称コラムといわれているものには、図1に示す断面があります。 コラムを設計に採用した場合、建物の上下階の柱のせい・幅が異なる設計があります。このようなコラムの設計は、ほぼ100%仕口部分(柱と梁の納まり)が梁通しの設計となります。経済設計を目的に各階毎に柱断面寸法を変える設計方法です。構造計算上は簡単ですが、仕口部(パネルゾーン)の加工面では、厄介です。上下階の柱のせいを同じ設計にし、単に板厚を変化させた設計をする限り、仕口部分の加工上、特に問題はありません。柱せいを絞った場合の仕口部分は、図2のようなケースがあり、仕口部分の柱材(パネルゾーン)の加工が厄介になります。柱断面を絞った場合の仕口部の詳細図を図3に示します。

 板厚を加味した異径断面は、角形断面を構成する板のコーナー部分の完全溶込み溶接部や、上下ダイアフラムとのT継手部に、次のような問題があります。コーナー部の角溶接は、片面絞り・両面絞りとも同様に、鋼板同士の交角が90°より大きくなる(直角でない)ため、裏当て金の取付けで、図3のイ-イ断面のように、裏当て金を傾斜加工しない限り、組立て精度によっては密着しないこともあります。平鋼の裏当て金の場合は溶接時に溶け落ちの原因となり、溶接後、この部分の超音波探傷検査(以下UT)を行った場合、溶込み先端部の反射エコーが高くなり、欠陥か否かの判定に影響します(欠陥と見られやすい)。

 このようなことは、上下ダイアフラムと4面の柱材との溶接についても同様であり、図3のA部についてはコーナー部の角溶接と同様のことがいえます。B部については、たれ込み溶接となりやすく、柱の絞られる量が大きい程、隙間も大きくなり、たれ込み部分のUTの欠陥検出率も多くなります。

 上下ダイアフラムと取合う4面の鋼板は、実際の加工寸法を図4に示すように、現寸による展開を正確に行わなければなりません。現寸は、図4のd1、Δd1からd2の寸法を展開し、a材・b材寸法を展開します。a材については、W1, W3寸法プラス末広がりする分、大きくなるはずで、コラムの板厚が12mm以下や、柱の絞り量が片側で50mm程度で、梁成も400〜500mm位であるため、勾配も1/8〜1/10とゆるいことなどにより通常の加工精度±2mm位に納まってしまうことから、広がり分を無視しています。

 仕口を構成する部材は、切板を経て四面開先加工を行うなど2度切りとなり、加工工数だけでなく、寸法精度の確保、溶接部の品質確保の上での問題がないわけではありません。 また、コラムのコーナー部分と仕口部分の角が一致しないということもあります。このような点などを含め、日の字型断面柱の場合と同様の問題点として引き合いに出されたものと思います。

図1
図1 ボックス型柱断面の分
図2
図2 コラムの絞り形
図3
図3
図4
図4

参考文献:建築技術者の鉄骨Q&A

▲質問一覧に戻る