建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

1-13 完全溶込み溶接及び隅肉溶接の要点

梁端溶接部において完全溶込み溶接と隅肉溶接を使用する際の法的ならびに力学的な条件について教えて下さい。

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A

基本的に梁端であろうとその他の箇所の接合部であろうと、荷重条件を考慮して接合部を適切に設計してあれば、その溶接部を完全溶込み溶接で行おうと隅肉溶接で行おうと法的にも力学的にも問題はありません。その場合の適切な条件とは、完全溶込み溶接と隅肉溶接の許容応力度として建築基準法に定められた以下の値を採用し、接合部に作用する応力に対して溶接部を安全に設計することです。

完全溶込み溶接の短期許容応力度:引張応力、圧縮応力に対してF、せん断応力に対してF/\(\sf\sqrt{3}\)

隅肉溶接の短期許容応力度   :あらゆる応力に対してF/\(\sf\sqrt{3}\)

ここで、Fは使用する鋼材の基準強度で、国土交通省の告示(平12建告第2464号)に規定されている値です。

ここに述べたように完全溶込み溶接は、通常の構造設計で基本的に対象としている引張応力、圧縮応力に対して鋼材自体と同じ許容応力度を用いることが法的に認められているため、溶接部が母材と同等の幅と厚さを有している場合には、応力度の検定が必要ないこととなり、梁端溶接部でもほとんど無条件で使用できることとなります。このため、一般的な構造設計者は、梁端溶接部は完全溶込み溶接で設計しておけば問題ないとの認識に基づいて無条件に完全溶込み溶接を採用することが多いようです。

一方、隅肉溶接では、そこで伝達する応力は常にせん断応力であり、そのため、許容応力度は、常にF/\(\sf\sqrt{3}\)となり、完全溶込み溶接に比べて1/\(\sf\sqrt{3}\) ≒ 0.58倍だけ小さい値となります。従って、梁端溶接部には隅肉溶接を適用しない場合が多いようです。

しかし、梁端溶接部であっても梁フランジの板厚が 12mm 程度であれば、隅肉溶接のサイズを 15mm とすれば、保有耐力接合となるので、隅肉溶接を使用すること(溶接量は約1.4倍となる)は可能です。この場合、フランジに開先を加工する必要がなく、超音波探傷も不要で隅肉溶接の脚長を計測すれば溶接部の検査は終了するので、部材の加工や施工面で考えるとコスト面でも完全溶込み溶接より経済的と考えることもできます。

また、梁端溶接部であっても、例えばベランダなどの張出し部を支持するような場合には、作用応力が明確であるため、接合部を保有耐力接合とする必要がなく、梁端に作用する応力次第では、構造計算で確認すれば、隅肉溶接のサイズをより小さいものとすることも可能です。その場合には、溶接施工の手間とコストはより小さいものとなります。

更に、隅肉溶接の実際の最大耐力は、計算値(設計値)に比べて非常に大きいものであり、特に梁端接合部のように隅肉溶接が前面隅肉溶接となる場合は、特にその差が大きいことを考慮すると梁端溶接部に隅肉溶接を適用する可能性は更に大きいものと考えてよいでしょう。この点に関しては、実験によっても確認されています。このように使用する梁材の部材寸法とそこに作用する応力を適切に考慮することで、隅肉溶接の適用可能性を検討すれば、柔軟性に富んだ発想が生まれるはずであり、鉄骨建築物のコストダウンや工期短縮に繋がる可能性も検討する必要もあるのではないかと考えられます。

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