建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

9-9 工事現場HTB接手部のタイトフレーム下地

 屋根が折板である工場等の建物において,大梁上フランジボルトを避けるために折板受け材 (C-100x50x20x2.3程度) を梁上に取り付けますが,現場ボルト接合部においては,高力ボルト本締め後に現場で別部材を溶接で下地を延長します。その部材の件ですが,何か標準的な基準があるのでしょうか。
 設計図に記載がない場合は,同材を切欠いて設置する,平鋼(6mm厚)で接続するなど,鉄骨ファブによってそれぞれの対応をしているようです。

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A

 タイトフレーム下地については,鉄骨工事の範囲ですが,デッキ受けなどとは違って大梁継手部が高力ボルト本締め後の現場施工になるため,施工性や安全性を十分に考慮する必要があります。
 梁継手部の納まりについては標準的な基準はありませんが,(一社)日本金属屋根協会の鋼板製屋根構法標準1)には図1の納まり例が載っています。しかし,この方法では長尺の溝形鋼を梁全長に渡って現場溶接することになるため,現実的ではありません。

より現実的な例としては,(一社)日本金属屋根協会のテクニカルレポート「特集:タイトフレームを溶接する」2)に,図2に示すようなCT形鋼を加工した部材による納まり例が載っています。

 また,日鉄鋼板(株)の「高強度折板ニスクルーフL145設計施工マニュアル」3)には,同様にCT形鋼による図3の納まりが示されています。

 ただ,この納まりによればCTをスプライスプレートに現場溶接することになりますが,高力ボルトを本締めした後に溶接すると,スプライスが熱で歪んでボルトの張力が抜けたり,ボルト自体もスパッタが付着する等のダメージを受ける恐れがあるので好ましくありません。設計監理者によってはスプライスへの溶接は認めない場合もあります。
 また,この納まりについて、梁フランジ幅200mm,高力ボルトM20を想定して現寸図を描いてみると図4(a)のようになりますが,ナットの径と高さは意外と大きいので,溶接作業が困難です。
 日鉄鋼板の例においては,CTのフランジ幅が100mmであればナットに当たってしまいます。もちろんボルト頭を外側に向けてセットすれば多少は改善されますが,継手の詳細やシャーレンチの機種によっては難しい場合もあります。

 そこで,スプライスに溶接しない納まり案を図4の(b)〜(d)に描いてみました。

 (b)は,平鋼を両側のC形鋼に現場溶接する案です。この場合,平鋼の面外曲げ耐力は小さいので,タイトフレームの溶接部から風の吹上げ力が掛かった場合の安全性に疑問があります。特に,この図ではボルトが片側2本並んでいるだけなのでスプライスの長さは285mmですが,3本になると405mmとなり,ますます厳しくなります。さらに,平鋼はC形鋼の内面に差し込んで溶接するので3.2mmの段差が生じ,タイトフレームの割り付けによっては,タイトフレームの溶接ができなくなる恐れもあります。

 (c)は,C形鋼のフランジを切欠き,その両端を梁に現場溶接する案です。この場合,ナットが外側であれば切欠き部が当たるので,ボルト頭を外側に向けてセットする必要があります。また,C形鋼の板厚は3.2mmしかないので,(b)と同様に切欠き部の曲げ耐力は弱く,吹上げに対する安全性が心配されます。

 (d)は,溶接組立てで中央部を切欠いたT形断面の部材を製作し,端部を梁フランジに現場溶接する案を考えてみたものです。CT形鋼と違い板厚を自由に変えられるので,切欠き部のT形断面の曲げ耐力を最適な値に設定することができます。また,CT形鋼の場合,少量を手配してさらにガスで切欠くのは面倒ですが,この案では切板で組み立てられるので製作上もメリットがあります。

 以下に,高さ10m程度の建物を想定して,図5のように風圧力がかかった場合の(b)〜(d)案のタイトフレーム下地の応力をチェックしてみました。表1に示す計算によれば、(b)では曲げ応力は許容応力を大きく超過するのに対し,(c)と(d)では許容応力内です。また,(c)よりも(d)の方が十分に余裕があることが分かります。

 以上のことから,設計図に大梁継手部の下地の納まりについて記載のない場合は,(d)案を提案し,具体的な寸法形状や溶接詳細については構造設計者の指示によるのがよいでしょう。

 なお,タイトフレーム受け材のC形鋼の板厚は,2.3mmでは薄すぎます。一般的なタイトフレームの板厚が2.6mmで,そのサイズの隅肉で溶接するので,C形鋼の板厚は3.2mm必要です。
 設計図にC形鋼のサイズの指示がない場合,もしくはC-100×50×20×2.3と記載されている場合は,C-100×50×20×3.2で見積もっておいて,確認の質疑を上げましょう。

<参考・引用文献>
1) (一社)日本金属屋根協会:鋼板製屋根構法標準(SSR)1992、p.188
2) (一社)日本金属屋根協会:テクニカルレポート「特集:タイトフレームを溶接する」
http://www.kinzoku-yane.or.jp/technical/pdf/special-8.pdf

3) 日鉄鋼板(株):「高強度折板ニスクルーフL145設計施工マニュアル」
https://www.niscs.nipponsteel.com/products/yane/seppan/n-l145.html

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