建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

9-8 ベースプレート補強座金の厚さと大きさ

 アンカーボルトの少しのズレにより,ベースプレート孔を少し修正することがあります。その際,補強座金を挿入し,全周溶接と指示される場合がありますが,この場合,厚さ(t)や大きさ(A×B)に決まりがあるのでしょうか。BPL が柱面から 100mm〜150mm 程度のことが多く,指定される大きさによっては全周溶接困難な場合もあります。

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A

 アンカーフレームを組んだり,捨てプレートを用いたりして十分に気を配ってアンカーボルトをセットしても,コンクリート打設後に計測すると大きいずれが生じていることがよくあります。
 「6-5アンカーボルト孔の補強方法は」においては,孔をあけ直して補強板を隅肉溶接で取り付ける例があり,図には四周隅肉溶接となっています。
 ベースプレートが大きくて,リブ等との間隔が大きい場合には四周溶接ができますが,質問のように適切な溶接姿勢が取れないこともよくあります。

 補強板の役目,即ち,どのような力をどこに流せばよいかを考えます。
 アンカーボルトに作用する力は,引張力とせん断力です。引張力は補強板を圧縮しますが,補強板はベースプレートにメタルタッチとしているので力は直接伝達されます。次にせん断力が補強板にかかったときは境界面で滑ることになりますので,ベースプレートに力を流すために溶接で固定する必要があります。

 建築用アンカーボルトメーカー協議会のURL([JFMA] 建築用アンカーボルトメーカー協議会 JIS B 1220 構造用両ねじアンカーボルトセットABR)より,アンカーボルト:M27(ABR490)の短期せん断許容耐力Qaは86.0kN であり,これを用いて補強板の溶接長を計算してみます。
 ベースプレートの板厚が36mmなので,補強板は19mm×70×70 (孔径は+2mmの29mm)とします。対辺の2辺を70mm溶接する場合を考えます。サイズs=15mmとしたときの片辺の必要溶接長さℓは,溶接部の許容せん断力fsを325/\(\sf\sqrt{3}\) N/mm2として,

  ℓ ≧ Qa/(fs×s/\(\sf\sqrt{2}\))/2 + 2×s
   = 86.0×103/(325/\(\sf\sqrt{3}\)×15/\(\sf\sqrt{2}\))/2 + 2×15 = 51.6mm <70mm OK

 サイズsを12mmと小さくすると,

  ℓ ≧ 86.0×103/(325/\(\sf\sqrt{3}\)×12/\(\sf\sqrt{2}\))/2 + 2×12 = 78.0mm >70mm NG

となりますが,溶接する2辺の1角を廻し込んで溶接ができれば,OKとなります。
 したがって,3面溶接できれば,一つの角が回り込んでおり,さらに1辺が追加されるので余裕が大きくなり安全性が高くなります。

 アンカーボルトの孔径は,通常のボルト孔径にさらに+3mmとして,ボルト径+5mmとしています。ボルトの台直しやベースプレートの孔あけ直しなどの予防措置として,ホルト径+10mmとして設計するケースもあります。だたし,ベースプレート孔の部分にモルタルが充填されないと,アンカーボルトに付加曲げモーメントが作用するのでアンカーボルトを太くするなどの対応が必要です。
 既製の柱脚工法なども+14mmなどとなっているようですが,モルタル注入には気を遣っているようです。

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