建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

7-4 めっき部と赤さび発生部のHTB接合は可能か

 大梁の高力ボルト接合部において、仕口が錆止め塗装、梁が溶融亜鉛めっきの接合は可能でしょうか。可能な場合、めっきの範囲はどうすればよいでしょうか、
 また高力ボルトの種類は何を使用すればよいでしょうか。

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A

[回答1]
 外部に露出するめっき部材と、室内側の非めっき部材がHTB摩擦接合で取合う場合,一般に、仕口部分は非めっきとなり,めっき部材の仕口部は不めっき処理を施し、赤さびを発生させて非めっき部材と取り合うことになります。ご質問の趣旨はめっき部材の仕口部の不めっき処理を省略し、めっき面と赤さび面が直接取り合うような設計は可能かと理解します。めっき面の摩擦面処理は簡便さから恐らくりん酸塩処理を想定されていると思われます。
 残念ながらりん酸塩処理面と赤さび面のすべり耐力に関する研究は見受けられず,安易に採用すべきではないと考えられます。参考資料1)においてはめっき部材がグリットブラスト処理で非めっき部材もグリットブラスト処理(両者の粗さは75μmRz)のとき0.4を超えるすべり係数が得られたとの報告もあります。しかし、りん酸塩処理や赤さびとはかなり条件が異なりますので、必要であればすべり耐力試験、またはすべり係数試験を行い必要なすべり耐力が確保できることを確認する必要があると思われます。

<参考資料>
1)岡田久志、近藤信彦、橋本篤秀:非めっき構造物とめっき構造物境界部における溶融亜鉛めっき高力ボルト摩擦接合すべり耐力に関する実験、日本建築学会大会学術講演梗概集、材料施工、pp.1187-1188、2013年8月

[回答2]
 梁継手の左右で異なる摩擦面とすることも可能ですが、添板の左右で異なる摩擦面仕様となります.添板の左側を不めっき処理し、めっき処理側にもらい錆が生じないように左側の摩擦面としてジングリッチペイント等の処理を選択する必要があります.継手右側にはめっき高力ボルトの設計施工を行い、継手左側には一般の高力ボルトの設計施工を行うことになります.
 高力ボルト一本あたりのすべり係数が異なることから左右でボルト列数が異なることも想定されます.継手左右で異なる摩擦面を採用する場合はこれらに留意して設計、施工、管理を行う必要があります.

(※) この方法は、実際の製作において製造ラインを考慮すると複雑な工程と綿密な管理が必要となり、トータルコストが嵩んで現実的ではないと思われます。

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