建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

7-12 めっきHTB接合面のすべり係数試験

 溶融亜鉛めっき高力ボルト接合を適用する場合,構造図において摩擦面の処理にりん酸塩処理を適用する場合、すべり係数試験を行う,と特記がありました。そこで別件のすべり係数試験の実績により,試験の免除申請を行いましたが,工事監理者から別件の試験実績で使用した高力ボルトメーカーと実施工で使用予定の高力ボルトメーカーが相違すると指摘を受けました。協議の結果,すべり係数試験は高力ボルトの導入張力を測定し,試験で得られたすべり荷重から直接すべり係数が所定の値(0.40)を確保するか確認する方法であることから,試験実績と実施工の高力ボルトメーカーは違ってもよいことで工事監理者の了解が得られ,当該工事のすべり係数試験は免除してもらいました。下記について整理したく質問致します。

 りん酸塩処理を行う摩擦面のすべり係数試験について,別件の試験実績で試験の免除申請を行う場合,試験実績と実施工の下記@〜Dの条件のうち@〜Bは一致する必要があると考えますが,C,Dは試験実績と実施工に相違があっても問題ないと考えてよいでしょうか。
ご回答をお願い致します。
@ 溶融亜鉛めっき施工工場
A りん酸塩処理施工業者 
B りん酸塩処理剤
C 溶融亜鉛めっき高力ボルト径 (例)…試験実績はM16、M20、実施工はM16、M20、M22
D 溶融亜鉛めっき高力ボルトメーカー (例)…試験実績はN社,実施工S社

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A

1. (一社)日本建築学会「高力ボルト接合設計施工ガイドブック」2016 において,次の記述があります。
***************************************
4.5.3 摩擦面処理  ・2009年に摩擦面処理にりん酸塩処理を使用することが一般認定の改定により認められた。同処理を行う場合はすべり試験を実施し,測定値のすべてが所定の値以上であることを確認しなければならないが,りん酸塩処理作業条件が同じであれば,他の工事についてもその条件を有効とし,すべり試験は不要とすることができる。
4.6 めっき高力ボルト摩擦接合すべり試験  ・溶融亜鉛めっき高力ボルト摩擦接合部のすべり性能確認試験は,特別な場合を除きすべり耐力試験を行えばよい。
4.6.1 すべり耐力試験  1) すべり耐力試験に用いる試験体
試験は、実際の継手または同一条件で別につくられた試験体で行うのが望ましい。実際の継手もしくはそれに近い試験体で行えない場合は,ここに示す標準試験体3体を用いる。
標準試験体による場合は,実際の継手との関連性を十分に検討し,特に摩擦面の状態については,実際の摩擦面を再現していることが必要である。

4.6.2 すべり係数試験  1) 試験体,使用ボルトおよび試験
すべり係数試験に用いる試験体,使用ボルト,その他,試験方法等は,以下の点を除きすべり耐力試験と同じとする。
・使用ボルトの導入張力の測定が不可欠であり,・・・ひずみゲージを貼付して,ひずみを検出することにより行うことを原則とする。
・すべり係数は,すべり荷重・摩擦面の数・締付けボルト数・導入ボルト張力より算出する(計算式は省略)。
・3体すべてのすべり係数が0.40以上を満足すれば合格とする。
***************************************

 以上より、ご質問にある@〜Bは試験省略のための条件と考えることができます。

Cボルト径,Dボルトメーカーについて
「実際の継手を再現した試験体が望ましい」の解釈によりますが,下記の理由で試験省略条件に該当すると考えます。
 試験の本来の目的が「摩擦面の状態を確認する試験」ですので,少なくとも同一メーカーの製品であればボルト径が変わっても試験は省略可能と考えます。また,各ボルトメーカーは同じ認定基準で大臣認定を取得しています。従って,試験の際の導入張力にメーカー間の違いを考える必要はありません。
 従って,ご質問にあるCボルト径が変わる場合,Dボルトメーカーが変わる場合であっても試験は省略できると考えます。

 但し、@〜Dは「実際の継手を再現した試験体が望ましい」の解釈により,いかようにも考えることができますので,もし,試験免除条件として認められなかった場合は,なぜダメなのか少し踏み込んだ理由を質問するのもよいと思います。

2. 摩擦面の状態について
 「特に摩擦面の状態については、実際の摩擦面を再現していることが必要である。」となっています。
 この試験は施工試験的要素もありますので,これは非常に重要な条件です。
 りん酸塩処理後の表面の状態について,下に某メーカーのカタログより限度見本を示します。ここでは塗厚による表面状態の違いを合否判定としています。また,メーカーのカタログには作業手順も書かれていますので,試験体作成と実施工時は同じになるように作業を行うことが重要です。

<参考・引用文献>
1. (一社)日本建築学会「高力ボルト接合設計施工ガイドブック」:2016
2. オーエム工業(梶jパンフレット 2025年8月閲覧
ダウンロードページ | WEBカタログ | めっき・表面処理・鉄構 | オーエム工業

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