建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

6-1 アンカーボルトのJIS制定

 建築構造用アンカーボルトのJIS規格が制定されたということですが、その内容、使用上の条件等について教えて下さい。

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A

 構造用アンカーボルトのJIS規格は、「JIS B1220:2010 構造用転造両ねじアンカーボルトセット」及び「JIS B1221:2010 構造用切削両ねじアンカーボルトセット」であり、これらのJIS規格は、2010年10月に制定されています。

 これらの規格は、従来使用されてきた日本鋼構造協会規格「JSS II 13-2004建築構造用転造ねじアンカーボルト・ナット・座金のセット」及び「JSS II 14-2004建築構造用切削ねじアンカーボルト・ナット・座金のセット」をベースとして日本鋼構造協会で原案を作成してJIS 規格化されたものであり、主として建築鉄骨構造物の露出形式柱脚に使用するアンカーボルト(以下 本件アンカーボルトと称する)を対象としたものです。これらのアンカーボルトは、形状・寸法・材質・各種の耐力等の構造的な面に関する内容は、上記JSS規格に規定された内容と全く変更のないものとなっており、その呼称(ABR、ABM)も同じものとなっています。規格の名称が建築構造用から構造用となったのは、これらのアンカーボルトが土木構造物等でも使用されてきた事情を考慮したためです。

1.本件アンカーボルトの規格の主な内容
 本件アンカーボルトの規格の主な内容は、以下の通りです。詳細は、JIS規格をみて下さい。

1.1 JIS B1220 構造用転造両ねじアンカーボルトセット
1) ボルトセットの構成
ボルトセットの構成を図1に示します。この図に示すようにボルト1本、ナット4個、平座金1枚で構成されています。

2) 構成品の強度レベル、ボルトの材料並びにボルトの呼びは、以下の通りです。


ナットの強度は、5J(保証荷重応力 610N/mm²)
座金の硬さは、200J(ビッカース硬さ 200HV〜400HV)

3) ボルト、ナットおよび座金の基準寸法(dはボルトの呼び)
ボルトの長さ:25d以上  ねじ部の長さ:3d以上 ナットの高さ:0.8d 座金の厚さ:M16,M20 4.5mm、M22〜M27 6mm、M30〜M48 8mm 座金の外径:2d

4) ねじ部の加工法
ねじ下径となるよう精密圧延された棒鋼を用いてそのまま転造加工したものです。

1.2 JIS B1221構造用切削両ねじアンカーボルトセット
1) ボルトセットの構成
ボルトセットの構成は、JISB1220と同じで、図1に示すとおりです。

2) 構成品の強度レベル、ボルトの材料並びにボルトの呼びは、以下の通りです。


ナットの強度は、5J(保証荷重応力 610N//mm²)
座金の硬さは、200J(ビッカース硬さ 200HV〜400HV)

3) ボルト、ナットおよび座金の基準寸法(dはボルトの呼び)
ボルトの長さ:25d以上  ねじ部の長さ:3d以上 ナットの高さ:0.8d 座金の厚さ:M16,M20 4.5mm、M22〜M27 6mm、M30〜M52 8mm       M56〜M64 9mm、M68〜M95 12mm、M100 16mm 座金の外径:2d

4) ねじ部の加工法
ボルト呼び径を持つ棒鋼を用いてねじ部を切削加工しています。

2.本件アンカーボルトの法的な位置付け
 建築基準法では、第37条(建築材料の品質)において、建築物の基礎、主要構造部に使用する建築材料は、第一号(日本工業規格に適合するもの)、または第二号(指定建築材料毎に 国土交通大臣が定める技術基準に適合するものであることについて国土交通大臣の認定を受けたもの)の条件を満たすものであることが定められています。
 アンカーボルトは、主要構造部に使用する建築材料の一種ですが、法第37条における指定建築材料とはなっていません。しかし、現在、ボルト自体は、JIS規格材であるSNR棒鋼を用いており、その両端にねじ加工を施しただけのものであるため、指定建築材料の「鋼材」としての規格に適合するものとして建築基準法上その使用について特段の問題はないという判断の下にその使用を国土交通省でも認めています。なお、それらのアンカーボルトに使用するナットおよび座金は、指定建築材料の「高力ボルト及びボルト」に規定されたJIS規格品の規 定を満たすものとしております。


図1 アンカーボルトのセット

3.本件アンカーボルトの設計、施工について
 本件アンカーボルトは、一般的な構造用アンカーボルトとして問題なく使用できます。しかし、塑性変形能力に富んでいるというその構造特性を活かした設計法は、日本鋼構造協会が刊行している「建築構造用アンカーボルトを用いた露出柱脚設計施工指針 改訂版」に詳細に記述されていますので、それを参考にするとよりよい設計ができます。なお、この指針では、 詳細な施工法についても記述されています

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