高力ボルトの使用期限についてですが、未開封の状態ではどの程度の期間まで保管していても大丈夫なのでしょうか。又、開封した場合、どの様な管理をすれば使用しても大丈夫なものでしょうか。
高力ボルト製造メーカーが会員である高力ボルト協会の高力ボルトのQ&A1)では、高力ボルトの保管状況と期間が品質に及ぼす影響について以下の回答を行っています。
「ボルトの保管状態と期間が品質に及ぼす影響は、主にトルク係数値の変化の有無によります。ここで、トルク係数値の変化は、保管状態がボルトメーカー所有の倉庫内と同程度の状態である場合、ナットに施した潤滑剤の成分が経時変化を受けるか否かでほぼ決定されるので、ボルトメーカー間で若干の差は予想されますが、3年程度は問題ないとされています。」
また、ゼネコンが会員である一般社団法人日本建設業連合会(以下、日建連と称する。)の鉄骨工事Q&A2)では、高力ボルトの保管期間について以下の回答を行っています。
「高力ボルトの保管期間を定めた規定はありませんが、各メーカーの見解としては、1年程度は問題 ないとしているものが多く見受けられます。高力ボルトを長期間保管した場合の問題点として考えられるのはトルク係数値が経年変化してしまうことです。トルク係数値の経年変化はナットに施した潤滑剤の成分が経時変化を受けるか否かでほぼ決定されますが、保管状態がボルトメーカー所 有の倉庫内と同程度の状態である場合、1年程度は問題ないとしているようです。
当然、保管状態によってトルク係数値の経年変化は異なりますので、保管期間としては概ね1年を目安と考えるものの、保管状態・ボルト自体の状況もしっかり見極めるようにして下さい。場合によっては導入張力確認試験(トルシア形高力ボルトの場合)、トルク係数値試験(高力六角ボルトの場合)の再検査を行うことも必要です。」
以上から、高力ボルト協会と日建連での見解は相違しますが、保管状態がボルトメーカー所有の倉庫内と同程度の状態である場合1〜3年程度は問題ないと考えられているようです。
また、開封されたボルトも、ナットに施した潤滑剤の成分が経時変化を受けないように管理すれば良いということになりますが、ファブではこの管理を行うことは難しいのではないかと思われます。開封されたボルトを時間が経過して使用する場合は、日建連の鉄骨工事Q&Aに記されている導入張力確認試験(トルシア形高力ボルトの場合)、トルク係数値試験(高力六角ボルトの場合)の再検査を行うことが望ましいと思われます。
<参考文献>
1)高力ボルト協会ホームページ「高力ボルトのQ&A」
2)一般社団法人日本建設業連合会ホームページ「建築、鉄骨工事Q&A」
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