建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

5-13 HTB孔の千鳥配置で第一孔の位置は

 幅300mmの梁のフランジに対するHTBは千鳥配置になりますが、第一孔(接合部端部から最初のボルト孔)を内側とするように構造設計者から要求されました。(その設計事務所の標準であるともいっています。)根拠の提示を依頼しましたがいま一つ不鮮明です。この点についてご教示下さい。

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A

 千鳥配置のボルト孔については、必ずしも一定の規則があるわけではなく、色々な形が採用されているようです。例えば、鋼材倶楽部、JSSC等が参加した鉄骨構造標準接合部委員会編のSCSS-H97においては、継ぎ手中心(両側からの突き合わせ部)で必ず外側から始めています。

 しかし、私は、継ぎ手部における応力分布の関係から「梁端に最も近い断面で梁フランジ小口から離れるよう、すなわち梁心に近い方に孔を開けるべき」と考えています。梁端に近い位置とは、柱に最も近い位置のことです。この位置は、地震時に梁に作用する曲げ応力が最も大きくなる箇所であり、箱形断面の柱とH形断面の梁の組合せで考えると、梁端で梁フランジ面内の応力は柱の外側のスキンプレートに伝達されるため、梁フランジ内の応力分布は、梁の小口に近い方が大きくなっています(下左図参照)。このため、大地震時にはこの位置での梁破断の可能性が大きいことを考えると、ボルト孔は梁の小口から離す方が骨組としての力学性能がよいと考えるからです(下右図参照)。

 つまりボルト孔径が同じであれば、作用する大きな曲げ応力によってボルト孔を通る断面で破断が生じる場合、破断は梁の小口から始まるので、ボルト孔が梁の小口から遠くに位置されている方が曲げ耐力が大きくなるからです。

 ただし、この場合継手中心から半分において、ボルト本数が偶数か奇数かによって梁の継ぎ手中心に最も近い側のボルト位置が小口よりになったり、梁フランジの中心に近い方になったりするので、ボルト孔の加工上(けがき位置が変化する)ファブはいやがるかも知れません。しかし、力学的な観点からは上記のようにすべきであると考えます。


梁端における引張側梁フランジ内の歪分布フランジ幅300mmの孔あけ例

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