ショートビードは何故避けなければならないのでしょうか。
この質問については、日本溶接協会編「接合・溶接技術Q&A1000」に示された以下の2問に関する解答を参照して回答します。
Q04-02-43
高張力鋼の溶接施工においてアークストライクやショートビードが問題とされる理由について教えてください。
Q02-02-01
高張力鋼の溶接構造物を組み立てる際のタック溶接(仮付け溶接)のビード長さを40〜50mmとし、それより短いビードのタック溶接をさける溶接施工基準が多いのはなぜですか。
ショートビードに明確な定義はないようですが、日本語に直すと「短いビード」となります。Q04の回答の図2は溶接ビード長さとHAZ最高硬さの関係です。Q02の回答での図1も同様です。この場合、使用鋼材は490N/mm2級鋼です。これらからビード長さが短くなるとHAZが硬化することがわかります。
アークストライクは、いわばスパークの跡ですので、ほとんどビード長さはありませんが極端に急冷され、硬化も激しいので微細な割れが発生することがあり、また、ショートビードでは、硬化の問題の他に溶接欠陥(ブローホール、割れなど)が入る可能性ということが問題となります。
溶接欠陥発生は溶接技能者の技量に左右されますが、硬さの問題は溶接技能とは関係ありませんので、適切なビード長さを確保することが重要となります。
JASS 6では、組立て溶接の最小ビード長さは、ショートビードとならないよう板厚により異なりますが、30mmあるいは40mmとしています。 Q04回答の図2は570N/mm2級、690N/mm2級などの建築鉄骨ではまず使用しない高強度の鋼材に関するデータですが、ビード長さ30mmの場合でもビッカース硬さが330程度です。
Q02回答の図1ではビード長さが30mm以下であると急激に硬さが上昇し割れ発生の危険度が高まるといえるので、この程度の長さで適切と考えます。
また、ビッカース硬さが350程度以上になると低温割れ(遅れ割れ)発生の危険性が高くなるといわれますので、この程度の長さ(30mmあるいは40mm以上)で適切と考えます。
<出典>:日本溶接協会 接合・溶接技術 Q&A1000
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