建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

3-88 勾配梁の開先角度の管理値

 勾配の大きい梁を取付ける時に開先角度が35°を確保できなくなることがあります。 開先角度の上側の許容差はありませんが下側の許容差は定められています。
 ベベル角度35°とした場合の5% 勾配においては,管理許容差を超えていますが限界許容差は逸脱していませんのでそのまま加工してもよいでしょうか。


 又、ベベル角度45°とした場合の10%勾配においては、開先角度は35°より大きくなりますので許容差内と考えて加工を行ってもよいでしょうか。


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A

 表1に,日本建築学会 建築工事標準仕様書鉄骨工事JASS 6 付則6 鉄骨精度検査基準2018年版1)による開先角度の許容差を示します。
 5%勾配の場合の開先角度32.1°は,開先角度35°設定では管理許容差(−2.5°以上)を超えるが限界許容差(−5°以上)以内です。また,ベベル角度45°を用いた10%勾配の場合の開先角度39.3°は管理許容差(−2.5°以上)を満たしています。開先角度の許容差は下側を定めているが上側の定めはなく,いずれの場合も,限界許容差を満たしているため,加工は行ってもよいことになります。
 なお,文献 2) において,上側の許容差が規定されていないのは,開先角度が多少大きい場合でも溶接欠陥の発生に対して影響が少ないと考えられるためとしているが,開先角度が過大になる場合,開先角度の上側の許容差は規定していないが溶接量の増大により溶接ひずみが発生するため施工法に合わせて許容差を定めておくのがよいとしています。


 また,通常,鉄骨製作工場の工作基準における溶接標準積層図は開先角度35°で作成していると思いますので,開先角度が35°より過小もしくは過大となる場合は入熱・パス間温度管理及び溶接変形に対する管理の意味において,溶接施工試験を行って溶接部の性能・品質及び溶接管理方法・溶接標準積層図を補足し,充実を図る必要があります。

 ガスシールドアーク溶接法により,開先角を35°より小さい狭開先とした場合,
・初層の高温割れの発生
・シールドノズルと母材の干渉
・シールド性能の保持
等の問題が考えられます。
 しかし,研究成果及び実績から開先角度を30°としてもこれらの問題についてはほとんど影響ないとされ,日本建築学会 建築工事標準仕様書鉄骨工事JASS 6 付則5「完全溶込み溶接・部分溶込み溶接の開先標準」(2018年版) 3) においては,ガスシールドアーク溶接法による場合の開先角度30°が追加されています (表2)。

 このようなことから,開先角度を30°を基本とすると,ガスシールドアーク溶接によるベベル角度35°を用いた5%勾配の開先角度32.1°は管理許容差−1°以上,かつ,開先角度30°と35°の中間の値で,また,10%勾配の開先角度29.3°の溶接は,開先角度30°の管理許容差−1°以上を満足しているので,溶接部の性能・品質は確保されると考えられます。


<参考文献>
1) 日本建築学会、建築工事標準仕様書鉄骨工事JASS 6 : 2018 p.82
2) 日本建築学会、鉄骨精度測定指針 : 2018 p.43〜44
3) 日本建築学会、建築工事標準仕様書鉄骨工事JASS 6 : 2018 p.76

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