梁せいが700mm以上の大梁でウェブのスプライスPLに,建て方時の安全上,蝶番用パイプ等を溶接で取付ける指示が多くあります。スプライスPLに溶接等の熱を加えることは,構造の観点からはあまり好ましくないと認識しております。
現場施工側から指示があった場合,構造設計者への確認をせずに溶接しても支障はないのでしょうか。毎回,構造設計者へ報告するべきでしょうか。

母材に対する溶接の影響は、表面的なアンダーカット等と熱による硬化や靭性の低下があります。このような部分に引張応力が作用すると破断の起点となる可能性が高くなるので,避けられています。特にH形梁のフランジの柱梁取合部近傍やブレースは大きな繰返し応力が作用するので,靭性が期待されているからです。
梁せいが大きい場合に,建て方時の安全上の理由から蝶番を取り付けていますが,これについては構造設計図に記載がないのが普通です。
スプライスPLに取付ける蝶番の溶接についてですが,梁の継手は応力の小さい部分に設けることになっていること,破断の起点にならない梁ウェブとスプライスPLに取り付けていることで,溶接による硬化や靭性の低下の観点からは大きな問題となることはありません。しかし,表面欠陥のアンダーカットや角落ちはあってはなりません。
TYPE−Aは,スプライスPLの小端に取り付ける仕様です。両面フレア溶接としていますが,スプライスPLと梁ウェブは密着させる必要がありますので,溶接の盛りが大きいと密着せず問題となり,G仕上げする必要が生じる可能性もあります。また,小端面の溶接は角落ちする可能性もあります。
TYPE−BもスプライスPLの小端に取り付ける仕様ですが,片面フレア溶接でありTYPE−Aのようにスプライスへの密着の心配はありません。ただし,片面溶接のため溶接を適正に行うことが大切です。脚長が不足したり溶接欠陥が内在したりすると,思いかけない衝撃などで破断する可能性があります。
TYPE-Cは,小端面への溶接ではないので角落ちの心配はありません。ただし,ボルトとボルトの間に取り付けているので、溶接余盛が座金と干渉しないように注意する必要があります。例えば,ホルトピッチが60mmのとき,M22の座金径は44mmであり,空きは16mmとなります。ガセットPL-6に脚長を3mmとすると計12mm,残りは4mmとなり片側2mmの余裕しか残りませんので,ボルト孔間の中央に取付けるように管理が重要です。
また,ボルト径が大きいM24の場合は,座金径は48mmのため残りは0mmとなり,ピッチを大きくするとか,千鳥配置にするなどの対応が必要になります。
「構造設計者への確認をせずに溶接しても支障はないのでしょうか」の問いについては,鉄骨加工図を描く初期段階で,継手基準図に蝶番の取付け要領を作図しておけば,設計者,監理者のチェック,承認を受けることになりますので,特に事前に質疑を上げたりすることは必要ないと考えます。
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