建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

3-75 ロングスパン梁におけるキャンバー寸法

 柱と柱の間隔が15mを超えると少し梁がたわんで下がります。弊社では梁の長さが11mを超えると横にして曲がりを見てムクリができるように組み立てます。ただ中間ジョイントがあるロングスパンの梁の場合はキャンバーを強制的につける必要があります。
 設計図にキャンバー寸法が記載されている図面もありますが記載のない図面もあります。記載がない場合,協議によりキャンバー寸法を質問しますが回答が戻って来ないケースがあります。標準となるキャンバー値の算出方法はあるでしょうか。

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A

 キャンバーの取り方については,設計図書に記載があるとか設計者の指示があるべき項目です。それらがなく,長スパンの場合にはキャンバーを取ったほうがよいか製作者の長年の経験から提案することはよいことです。
 そこで,一例として梁たわみの計算例を以下に示します。

 「計算例」
 スパン:18m,支配幅:7.2m
 梁部材:H-800×300×14×26 w=182kg/m,Ix=286,000cm4

スラブ:t = 150+10(モノリシック,普通コンクリート),フラットデッキ(w=19kg/m2), 小梁自重(床面積に対して25kg/m2

 梁+小梁+デッキPL自重(w1),スラブ自重(w2)は,以下の通り,なお,簡単のために等分布荷重として計算します。
  w1=(182+25×7.2+19×7.2)×9.8 = 4.9kN/m
  w2=(160×2.4×7.2)×9.8 = 27.1kN/m

w1,w2に対するたわみδ1,δ2は,それぞれw1に対して両端ピン状態として,w2に対して両端剛としてたわみを計算します。
  δ1= 5×4.9×103×184×109 384×2.05×105×286×107 = 11.4mm
  δ2= 1×27.1×103×184×109 384×2.05×105×286×107 = 12.6mm

 したがって、全たわみδは11.4+12.6=24mmとなります。
 この計算値に対して100%のムクリを付けた場合,計算通りに撓まなければスラブ厚が確保できなくなる可能性があるので,通常70%程度の17mm程度をムクリ量とすることが多いです。
 センタージョイントの場合,17mmのムクリは17/(18,000/2) = 1/530で,上下フランジの片側の伸び縮みは,±800/2/530=0.75mmとなります。この量はボルト孔のボルト径+2mmで十分に吸収できる量であり,現場で地組の時に横倒しの状態で治具等を用いれば,継手のボルト締めは可能です。フランジのスプライスプレートをその伸び縮み代分だけ増減させて加工していれば,より施工は確実になります。

 これ以上のムクリ量になる場合には,センタージョイントを少しずらして,長い方の梁をセンターで工場溶接により継ぐか,フランジとウェブのスプライスプレートの孔位置を調整するなどの工夫が必要です。

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