建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

3-41 ベースプレートと免震装置とは摩擦接合は不可か

 下図に示す免震装置のフランジプレートにM39ボルト(JIS六角ボルト,強度区分6.8)が用いられ,鉄骨柱脚ベースプレートとの接触面の仕様は支圧接合となります。

 支圧接合の為、孔径は40φとなり、孔芯のずれの許容差はJASS 6付則6に示される管理許容差e≦1mm(限界許容差e≦1.5mm)では施工困難な状況です。本仕様の場合の孔芯のずれの許容差と許容差を超えた場合の対処の方法を例示いただけないでしょうか。

 また,免震装置と鉄骨の接合ボルトを太径高力ボルトとし,孔径をボルト呼び径の3mmアップとすれば上記の問題は解消されると考えます。免振装置と鉄骨の接触面の仕様について、支圧接合と摩擦接合はどのような考えで選定されるのでしょうか。



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A

 一般的に免振構造建物はRC造が多いですが、この場合免振装置に問題が生じると取り替える必要があることから積層ゴム上下のRC躯体に雌ネジ加工をほどこしたアンカー(長ナット等)を埋め込んでおき、積層ゴムのフランジを介してボルト接合するのが一般的なディテールになります。この場合ボルトの仕様としては、相手が通常のナットとは異なりますので、摩擦接合にはなりません。(一部、摩擦接合に使用できるアンカーとして認定を取った製品もあります。)従って、通常は中ボルトを使用し、支圧接合となります。質問の場合は、下フランジは相手がRC躯体ですので、上記と同様のディテールとなっています。上フランジは鉄骨造のベースプレートですので、ボルトとナットの組み合わせで接合することも可能です。従ってこの場合は、高力ボルト摩擦接合でも支圧接合でも良いことになります。

 ただ、積層ゴム径が大きくなりますと、働くせん断力も大きくなりますので、通常よく用いるM24程度の摩擦接合では、ボルト本数が多くなり過ぎて、取り付けは困難になります。それで、例えば、M39の支圧接合などが選択されているケースが増えています。今回質問のケースもそれにあたります。

 免振装置の取り付けを支圧接合とする場合、ボルト孔のクリアランスは1mm以内と大変厳しい条件となり、現実的には施工は不可能です。それで、便宜的には大き目の穴をあけて、多少ごまかしながらなんとかやっているというのが、実情のようです。

 この件に関しては、免振協会等からも特に規定・指針等は出てはいないようです。ただ、今年度の日本建築学会の東北大会では、ボルト孔のクリアランスを1mmと3mmとした場合を比較した実験が発表されています。大局的には問題が無いとの結論のようですので、参考にして下さい。

 免振構造は、地震対策としては極めて優れた方法ですが、装置の取り付け方を誤ると、問題が生じる恐れもあります。当該建物の構造方法の特徴、過去の事例等も正しく理解して、ディテールを決定することが必要です。正に、設計者判断が求められる事例と言えるでしょう。

参考文献)高山峯夫他:「積層ゴムフランジの取付ボルト孔径に着目した圧縮せん断実験」、2018年度日本建築学会大会(東北)、学術講演梗概集2018.09

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