建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

2-22 円形鋼管の鋼種・サイズによる入手性

 円形鋼管について,設計図書にSTKN490Bや厚さが一般的でないものが記載されているため,ロール対応で納期に追われたり,指定サイズが入手不可能な場合が多々あります。市場にあるものとないものを明確化して構造設計者に発信できる方法はないでしょうか。

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A

(1) 円形鋼管のJIS規格について
 建築鉄骨用に一般的に使われている円形鋼管の規格は,以下の2種類です。
   JIS G 3444:2025 一般構造用炭素鋼鋼管(STK)
   JIS G 3475:2024 建築構造用炭素鋼鋼管(STKN)
 STK材は,降伏比や溶接性に関する規定がないため,主として二次部材に使われます。種類としては,STK290,400,490,500,540がありますが,建築構造に使える種類はSTK400とSTK490だけです。一般的にはSTK400の方がよく使われているようです。なお,STK500は仮設足場用の単管の材料であり,建築基準法の指定建築材料には含まれていません。
 STKN材はSN材と同様に,耐震性や溶接性に関する性能を規定した建築構造専用の鋼材で,柱やブレース,トラスなどの主架構部材に使用されます。種類としては,STKN400W,STKN400B,STKN490Bの3種類があります。W種は弾性範囲で使用される二次部材に使用しますが,SN材のA種と異なり,Ceqなどの溶接性に関する規定があります。B種は溶接性と耐震性を要求される主要構造部材に使用され,SN材のB種と同様に,降伏比の上限が規定されています。この3種の中では,STKN490Bが市場で流通しているようです。

 鋼管のサイズについては,両JISともに,「管の寸法」という表に外径Dと厚さtが規定されており,外径は139.8mmや165.2mm等といった中途半端な寸法になっています。板厚も,3.6mmや7.1mm等の中途半端な寸法と切りのよい寸法が混在しています。角形鋼管(STKR)の場合は辺長が100mm,150mm等,板厚が4.5mm,6mm等と切りの良い寸法となっているのに対し,円形鋼管のサイズ体系は何故複雑なのでしょうか。
 その理由は,角形鋼管はほとんどが建材用なのに対し,円形鋼管は構造用以外に配管用,圧力配管用,ボイラー用,油井管用と,多くの分野で使用されているからと考えられます。
 外径寸法については,米国のインチサイズの影響を受けています。 (ただし,JIS規格とANSI規格では,同じ呼び系でも寸法が微妙に違うようです。例えば,150A/6Bの外径は,JISは165.2mm,ANSIは6.425in=168.2mm。) 一方,板厚が中途半端な寸法になっているのは,インチサイズ,ミリサイズ含め,国内で調達可能な板厚を網羅したのではないかと推測します。
 ちなみに,H形鋼のJISサイズが外法一定を除き全53種類であるのに対し,STK400のJISサイズは169種類にも及びます。鋼材問屋にとって,これだけのサイズ種類を全部在庫するのは非常に大変なことと思われます。

(2) 円形鋼管の入手性について
 円形鋼管の鋼種とサイズによる入手性に関しては,サイズ種類が非常に多いことと,JISサイズと流通サイズが違うことから,なかなか把握しにくい状況です。以下の表に,STK400とSTKN490Bについて,それぞれのJISサイズと鋼材問屋3社のwebサイトにおける常時在庫表をまとめて整理してみました。
a)STK400
 JIS G 3444の表6(管の寸法)には,外径が21.7mmから1016.0mmまで,厚さが2.0mmから22.0mmまで,全169種類のサイズが載っています。このうち,建築鉄骨の二次部材として使われる外径42.7mmから267.4mmまでのサイズについて,web上で在庫表を公開している3社の常時在庫の有無を調べ,表1の一覧表を作成しました。
 ただし,これらの会社の在庫表には,JISにない厚さもあるので,それを追加して「*」印をつけました。また,各社について「常時在庫あり」のものに「○」印をつけました。これにより,3社ともに常時在庫がないサイズを「入手困難」としてピンク色で,1社または2社に常時在庫があるサイズを「入手要確認」として黄色で示しました。
 これを見ると,例えば外径139.8mmにおいて,JISサイズである厚さ3.6,4.0,8.6mmは入手困難または入手要確認で,一方,JISにない3.5,6.6,9.6mmは3社ともに常時在庫ありとなっています。他の外径のサイズについても同様の傾向になっています。
 すなわち,JISサイズには入手困難なものもあり,逆にJISのほかに入手可能なサイズがあることが分かります。
b)STKN490B
 JIS G 3475の表7(管の寸法)には,外径が114.3mmから1006.0mmまで,厚さが5.0mmから40.0mmまで,全114種類のサイズが載っています。これらサイズについても,web上で在庫表を公開している3社の常時在庫の有無を調べ,表2の一覧表を作成しました。
 この場合もSTK400と同様に,JISサイズには入手困難なものもあり,逆にJIS以外に入手可能なサイズがあることが分かります。また,主柱用の大きなサイズの鋼管は電縫鋼管ではなくUOE鋼管または板巻き鋼管として製造されるので,受注生産となることが多く,その都度,製造可否検討と納期確認が必要です。

(3) 構造設計者への発信について
 構造設計においてSTKやSTKNのサイズを選定する場合には,「JISサイズには入手困難なものもあり、逆にJISのほかに入手可能なサイズがある」ことを認識し,事前に商社や問屋の在庫情報を確認しておくことが重要です。
 もし,そのような時間がない場合は表1又は表2を活用し,ピンクおよび黄色のサイズを避けてサイズを選定することも有効です。
 ただし,この表は,2025年10月時点における情報であり,その後の変更の可能性もあるので,念のため各社のホームページで確認して下さい。

表1

A社:住商メタルワン鋼管(株)
B社:宮脇鋼管(株)
C社:(株)ニッコー

表2

A社:住商メタルワン鋼管(株)
B社:宮脇鋼管(株)
C社:(株)ニッコー

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