建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

2-21 丸鋼ブレースの表記方法

 ターンバックル付き丸鋼ブレースのサイズとして設計図書に1-M16,RB-16,1-16φなどと記載されています。M16の軸径は14.5mmで,RB-16及び16φの軸径は16mmです。
 設計図書にターンバックル付き丸鋼ブレースRB-16と記載されていた物件でターンバックル付き丸鋼ブレースM16を使用したら建方終了後に軸径が16mmより小さいと指摘され,ターンバックル付き丸鋼ブレースM18に変更させられました。
 設計図書にRB-16や1-16φと記載されていたとき,丸鋼ブレースメーカーが製作している1-M16を使用するためには質疑応答書で確認してからの方がよいでしょうか。

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A

(1) 丸鋼ブレースの規格
 丸鋼ブレースは,現場施工時にたるみが生じないようにするため,一般的にはターンバックル形式のものが使われます。建築用ターンバックルは,建築基準法第37条における指定建築材料になっており,平成12年建設省告示第1446号において,JIS A 5540 : 2008「建築用ターンバックル」とJIS A 5541 : 2008「建築用ターンバックル胴」が指定されています。したがって,このJISに適合する製品または大臣認定を取得した製品以外のターンバックルは使用できません。
 次表にJIS A 5540の規定内容の一部を掲載します。

表1

(2) ターンバックルボルトのねじ部の加工方法
 JISでは,ターンバックルボルトのねじは,転造加工による並目ねじと規定されています。丸鋼に対するねじ部の加工方法には,切削ねじ加工と転造ねじ加工の2種類があります。
 切削ねじ加工は,ねじ切りバイトによって素材の一部を削り取って加工する方法で,ねじ部の最大径は軸部の径と同じか,それよりも小さくなります。ねじ部の有効断面積が軸部の断面積よりも小さくなるため,欠損率が大きく鋼材の降伏比が小さい場合は軸部が塑性化して変形能力を発揮する前にねじ部が破断するという欠点があります。
 一方,転造ねじ加工は,素材を転がしながらダイスで圧縮してねじを成形する加工法であり,ねじの最大径は軸部の径よりも大きくなります。ねじ部の有効断面積は軸部とほぼ同じとなるので,軸部が全長に渡って十分な塑性変形を発揮するまでねじ部が破断することはありません。また,切削ねじ加工と異なり,ねじ部の鋼材のファイバーフローを切断せず,塑性加工の影響でねじ部の表面組織が緻密になるので,ねじ部の強度が上昇します。したがって,転造ねじ加工は塑性変形能力を要求される耐震ブレースとして最適な加工法です。

 参考として,以下に切削ねじと転造ねじの加工法とファイバーフローの比較図を示します。(ユニオンツール株式会社ホームページより)

切削ねじ、転造ねじ

なお,JIS B 1220 : 2015「構造用両ねじアンカーボルト」におけるABRのアンカーボルトも同様に転造ねじとなっています。転送ねじについては,当協会ホームページのQ&Aに詳しい解説があるので,参考にしてください。
6-2「アンカーボルトのJIS改正」

(3) 丸鋼ブレースのサイズの表記方法
 JISのターンバックルの呼び方は,「M16」のように「ねじの呼び」で表されます。「M」は「メートルねじ」であることを示し,その後の数字はねじの呼び径(外径)を示します。質問にあるような「RB-16」や「16φ」は,軸部の丸鋼の直径が16mmであることを表すので,設計図書においてターンバックルブレースを指定しているのなら,そのような表記は誤りです。M16の軸部の直径は最大14.66mm、最小14.41mmと規定されています。

 しかし,設計図書に「RB-16」や「16φ」と記載されている場合,設計監理者の承認なしにJISのターンバックルのM16に変更することは避けた方が良いでしょう。もしかしたら,ターンバックルに詳しくない設計者が,軸部の径を16mmとして切削ねじのつもりで構造計算を行っているかもしれません。その場合,許容引張力をねじ部の欠損断面積を考慮して計算していれば,耐力的にはM16のターンバックルの方が安全ですが,M16の方が軸径が細いため弾性変形は大きくなり,層間変形角の計算が危険側となります。RB-16と同じ剛性にするためには,M18が必要です。

 したがって,このような場合には,質疑応答書で念のためJISのターンバックルの規格を説明したうえで,変更の可否を確認するのが安全です。
 なお,質問で「1-M16」や「1-16φ」の「1-」の意味が不明です。紛らわしいことに,羽子板の取付けボルトの指定も「1-M16」や「2-M20」といった表現になるので,これも質疑で確認しておく方がよいでしょう。

 なお,本質問に関連して,「1-12 丸鋼ブレース取付けガセットプレートの設計」に関連する解説があるので、参考にしてください。

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