設計図書に「柱と大梁は高炉材を使用」と記載されていることがあります。H形鋼は製造可能サイズであり,工期に余裕がある物件は対応ができます。
冷間成形角形鋼管の場合に高炉材鋼板指定は可能でしょうか。
(1) 冷間成形角形鋼管の種類
建築鉄骨に使用できる冷間成形角形鋼管には,JIS G 3466の一般構造用角形鋼管(STKR)および大臣認定材のロール成形角形鋼管(BCR)とプレス成形角形鋼管(BCP)の3種類があります。
このうちSTKRは,BCRやBCPと比べて化学成分の規定項目が少なく,溶接性にかかわる炭素当量の規定がありません。さらに,降伏点の上下限値,降伏比,及びシャルピー吸収エネルギー値の規定もないため,構造設計上BCR,BCPよりも厳しい制約が付けられています。このため,最近では建築鉄骨の柱材としては,BCRとBCPが一般的となっているので,以下の説明はBCRとBCPを対象とします。
なお,STKRとBCR,BCPとの違いは,当協会ホームページの鉄骨Q&Aの以下の質問と解説をご覧ください。
2-2 冷間成形角形鋼管のJIS材と大臣認定材
(2) BCRとBCPの規格と原板
BCRとBCPは,(一社)日本鉄鋼連盟の製品規定に準拠して製造メーカー各社が国土交通大臣の認定を取得した製品です。日本鉄鋼連盟の製品規定は以下から入手できます。
「建築構造用冷間ロール成形角形鋼管(BCR295)」
「建築構造用冷間プレス成形角形鋼管(BCP235,BCP325)」
原板はSN材をベースにしていますが,SN材にはない窒素(N)の上限も規定されています。これは,冷間加工による時効硬化の影響を低減するために設けられたものです。BCRの原板は熱延コイル,BCPの原板は厚板と,製造方法は異なりますが,いずれも化学成分や機械的性質が厳格な仕様となっているため,大部分は高炉材です。
参考に,BCRとBCPの認定取得メーカーの一覧を以下に示します。
(3) 高炉材鋼板指定の可否
設計図書に高炉指定の記載がある場合のように,原板が高炉材であることを確認する必要がある場合には,日本鉄鋼連盟の両製品規定の「13. 報告」において,顧客が造管メーカーに対して原板のミルシートの請求ができることになっています。
ただし,原板のミルシートには「高炉材」「電炉材」のような記載はありません。これは,鋼材のJISにおいては製鋼法を規定していないからです。したがって,高炉材であることの確認は,ミルシートを発行した会社が高炉メーカーであることで間接的に確認することになります。
なお,上記の表のJFEスチールの場合は,一貫製造メーカーであることから原板コイルに関するミルシートはありませんが,ホームページに「自社製高炉材コイル使用」の記載があることと,需要家のリクエストに応じて,「当該製品が高炉製品である」レターの発行が可能とのことです。
(4) 今後の動向
最近ではCO2排出量の削減の観点から,高炉メーカーでも電気炉の新設やスクラップ使用比率の増加などの施策を進めているので,今後は,メーカー名だけでは「高炉材」と「電炉材」の区別がつかなくなると思われます。スクラップを多くすると,鋼材の特性を低下させるCu,Cr,Snの含有量が増えるので,これらの上限値を管理する必要があります。今後は,設計者がより品質の高い鋼材を使いたい場合は,「高炉材」というような指定ではなく,具体的にどの化学成分が何%以下というような指定が必要になると思われます。
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