BCP325B材で手配した柱材(パネルゾーン部分)で,下フランジが内ダイアフラム形式となる場合は,板厚方向に曲げや引張がかかるので,柱材をBCP325Cとしてほしいとの要望があり,困りました。
厚さ方向にも特性が要求されるためと理解は出来ますが,コラム材の下フランジが溶接される範囲(面)を超音波探傷で確かめることで,B種をC種に代用ができるのでしょうか。
まず基本的事項を確認しておきますが,BCP325B材は,日本鉄鋼連盟が製品規定する建築構造用冷間プレス成形角形鋼管と呼ばれるSN490B材をベースにプレス加工して製造された角形鋼管で,降伏比80%以下,シャルピー衝撃エネルギー27J以上(平板部)に規定された靭性に優れた鋼材で,構造耐力上主要な部分の柱に用いられることを意図した鋼材です。BCP325C材はSN490C材をベースに,特に板厚方向に引張り力が働いた場合の剥離亀裂破壊(ラメラテア)にも対応する角形鋼管です。
設計者から,下フランジは内ダイア形式なので柱材はBCP325C材にするよう指示があったとのことですが,もしその旨が当初の設計図に明記されていたのであれば,BCP325B材に変えてもらえないかとするファブからの要望は,ラメラテアは脆性な破壊形式であり設計者としては拘る所ですので受け入れ難いことと思います。むしろ下フランジも上フランジと同様に通しダイア形式に変更できないかを確認する方が,設計者の意図がどこにあるかにもよりますが,受け入れられる可能性はあるように思います。
例えば右図のようなディテールの場合,鋼材の使い方としては正しいのですが,現場での誤作の発生等を考えますと,必ずしも適切であるかについては疑問が残ります。上下の柱も,最初からC材としておくというのも誤作を防ぐためには賢明な方法ではないかと思います。
なお,2018年版「冷間成形角形鋼管設計・施工マニュアル(日本建築センター)」には,「柱材については厚さ方向に引張力が作用することから,原則としてC種を用いるものとした。ただし,ダイアフラムと角形鋼管との溶接および,はりフランジと角形鋼管の溶接が通常のCO2溶接のような低入熱溶接の場合は,B種でも十分な性能が確保できる。」との記載があります。
これに従えば,通しダイア中間の柱材もB材とするという考え方もあると思います。設計者には工事現場での誤作の発生の可能性にも配慮した鋼種の選択を求めたいと思います。
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