建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

4-20 すべてフルペネ溶接とする設計は改善できないか

構造設計者は必要以上に完全溶込み溶接を要求する場合があります。部分溶込み溶接や隅肉溶接で十分耐力が確保されることが明らかな場合があっても、設計変更の質疑を出すと設計通りにやるように回答が来てしまいます。どうしたらよいのでしょうか。

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A

中小規模の柱角形鋼管、梁H形鋼のラーメン構造では、基本的に地震時に梁端部に塑性ヒンジが構成される構造形式を採用することが多いです。このような場合、梁端の溶接部は、保有耐力接合とするため、完全溶込み溶接とするのが一般的です。完全溶込み溶接としておけば、その部分の構造耐力を計算しないでも保有耐力接合となるからです。

しかし、このような場合もルート2の設計ルートを採用し、1次設計で部材の設計応力度が鋼材の許容応力度以下であることを検討すれば、梁端溶接部を保有耐力接合としないでも設計可能な場合があります。例えば、建物の階数が2階以下で、柱のスパンも5〜6m程度であれば、十分可能性があります。そのような場合、そこの使用する梁部材がH-250程度であれば、梁端の溶接部を隅肉溶接とすることは十分可能です。このようなケースがどのような設計条件で可能であるかを検討しておくことは梁端溶接部に隅肉溶接を採用する上で必要なことと考えます。

その他、柱から片持ち梁形式で持ち出しているバルコニーの支持梁などは構造設計上保有耐力接合とする必要はありません。このような接合部では、必要な構造計算を行えば、隅肉溶接で十分安全性は確保できる筈です。このような梁部材は、H-200×100×5.5×8やH-250×125×6×9程度の部材が多く、梁フランジの板厚も8〜9mm程度です。この場合、梁フランジを隅肉溶接とすれば、隅肉溶接のサイズはフランジの板厚以下で収まる筈です。この程度の板厚においても、完全溶込み溶接とする場合は、フランジに開先加工を行い、溶接後は超音波探傷試験をしなければなりません。それに対してこの溶接部を隅肉溶接とすれば、開先加工、超音波探傷試験の必要はなく、溶接部の外観検査と脚長とのど厚の計測のみで溶接後の検査は済ませられます。この場合の溶接部の加工・検査代を比べてみれば、隅肉溶接とした方が大幅に低価格で収まるはずです。

ただし、このようなケースでも、梁端を隅肉溶接とする場合は、構造計算が必要となるため、多くの構造設計者は、隅肉溶接を避け、完全溶込み溶接を要求するのが一般的です。構造設計者は、鉄骨部材の製作費に関する配慮より自分の手間を避ける傾向にあるためと推察されます。

従って、このようなケースについては、しかるべき機関において構造設計者、研究者、ファブ関係者から構成される検討委員会を設けて、どのようなケースでどの程度のコスト差が生じるのかを検討し、標準設計を示すことで対応するのがベストな解決法であると考えます。この際、上述したように、ラーメン構造の梁端溶接部についても、ルート2の設計で対応する場合の隅肉溶接での対応可能性のついても検討対象とする価値があるかもしれません。

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