建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

3-40 HTB孔のせん断孔あけ加工について

 JASS 6 鉄骨工事「4.9孔あけ加工(2)」に「…板厚が13mm以下のときは,せん断孔あけとする事が出来る」と記述されていますが,高力ボルトの孔あけ加工にせん断孔あけは認められていません。山形鋼 / 溝形鋼等の孔あけ加工に,せん断孔あけ加工機を用いる事が出来れば加工工数の低減が図れるのですが,下記部位のうち適用が可能なものがあるでしょうか。

1) 小梁端部の方杖 例 2Ls-65x65x6 GPL-9 HTB 2-M16

2) 火打ち/座屈止め 例 [-125x65x6x8 GPL-9 HTB 2-M20

3) 水平ブレース  例 L-90x90x7 GPL-9 HTB 2-M20

4) 仮設材ブレース 例 L-90x90x7 GPL-9 HTB 2-M20

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A

 この件については先ず、客先と協議のうえ承諾を得る事が大切だと考えます。しかし、JASS 6に記載されている通り、高力ボルト孔はドリル孔あけまたはレーザ孔あけとしなければなりません。上記のような軽微な変更の場合でも客先との打合せで対応していくことを勧めます。尚、質問中の4)については、仮設部材とのことで、せん断孔であっても問題はないと思います。1)では中間に綴りボルトもあると思われますが、用途から言えば普通ボルトでも構わない部分なので、承諾は得やすいと考えます。

 参考ですが、以前、日鉄住金ボルテン(株)の協力を得て、孔あけ加工方法の違い(ドリル孔とせん断孔)による高力ボルト摩擦接合継手のすべり試験を実施した結果を記します。

<試験概要>
 試験体------------板厚6mm、9mm、(一面せん断法)
 孔あけ方法------ドリル孔、せん断孔(孔あけ方向凹凸)
 高力ボルト------M16、M20(トルシア形高力ボルト)
 摩擦面処理------グラインダー掛け後赤さび発錆
 以上の組合せで試験体は各3体ずつ、計36体とした。
試験は耐力点法による。(通常のすべり係数の1.2倍とする)
ページの都合で、試験装置の概要については省略する。

<試験体形状及び組合せ図>



<試験体の形状・寸法>


ボルトの等級 呼び径 孔 径d 板厚t1 板 幅W はしあきe ピッチP
S10T M16 18 6,9 100 40 50
M20 22 6,9 130 50 60

<試験結果>

すべり試験の結果を表-1に示す。



<試験結果の考察>

1)孔あけ加工の違いによるすべり耐力

 孔明け加工の違いによるすべり耐力は、表―1に示すように6mm厚の全平均は1.29倍で、9mm厚では1.38倍の結果で確認された。
 区分毎のすべり耐力の平均は、Aは1.32〜1.39,Bは1.26〜1.39で、Cは1.29〜1.37であった。何れの区分も判定値を満足しており、孔あけ加工の違いによる耐力の差はないものであった。この理由は、加工工程がプレス孔あけ → グラインダー掛け → 自然発錆であることから、プレス加工後のグラインダー掛けによって孔のバリが除去されたため、ドリル孔との違いに差がなかったものと考えられる。

 また板厚の違いでは6mmと9mmで比較した場合、6mm厚では約1割程度低下している。これは一面摩擦で薄板形状であることから、載荷時の板の変形(そり)と板厚形状の影響から板が降伏しながらすべりが発生したと思われ、すべり耐力に影響したものと推察する。

(表-1)すべり耐力比


 板厚差の違いによるすべり係数値に若干差はあるが、これは前記で述べた板の変形と摩擦面の粗度・発錆状況等の影響によって変動したものと思われる。

(表-2)すべり係数


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