建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

1-12 丸鋼ブレース取付けガセットプレートの設計

 丸鋼ブレースのガセットプレートの設計に力学的な基準はあるのでしょうか。

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A

 現在、広く使われている丸鋼ブレースは、JIS規格品(JIS A 5540 建築用ターンバックル)が一般的です。このJIS規格品は、片方の端部にねじ部を有する丸鋼の軸部(ターンバックルボルトと称している)がもう一方の端部で羽子板金物に隅肉溶接されたもの2組がターンバックル胴で繋がれて使用されます。

 ここで使われている丸鋼は、ねじ下径に精密圧延されたもので、ねじ部は素材のまま転造で加工されています。このため、丸鋼の軸部径は、ねじの呼び径より小さなものとなっています。例えば、M20の呼びのターンバックルボルトの軸径は、最小18.07mm、最大18.33mmの範囲にあります。これは、アンカーボルトがねじ部破断する前にボルト軸部が全長に亘って十分な塑性変形を確保することで大きな耐震性を有するものとなっています。この点は、JIS規格アンカーボルトのABRと全く同様です。

 ターンバックルボルトの片方の端部には、羽子板金物が隅肉溶接されているが、この隅肉溶接のサイズと長さおよび羽子板金物の厚さと長さおよびそこに使用する取付けボルト(通常はF10Tの高力ボルトを使用する)の呼びと本数は、総て上記のJIS規格に規定されています。

 このJIS規格品は、ボルトの呼びでM6からM33まであり、ボルトの呼びに応じてこの羽子板金物を取り付けるガセットプレートは、取り付ける部材の形状、取付け詳細が構造物によって様々なものが考えられるために、JIS規格には定められていません。従って、このガセットプレート部分は、構造物を設計する構造設計者が使用するターンバックルボルトに応じてターンバックルボルトが十分塑性変形するまで破断しないことを基本条件として設計することとなります。

 このため、設計者がガセットプレートの必要な箇所の設計を間違わないよう、日本鋼構造協会が、JSS IV 01-2005として「建築用ターンバックル筋かい設計施工指針・同解説」を刊行しており、その「3章 構造設計 3.2 構造計算 3.2.3 筋かい端部の設計」で7ページにわたって詳細に解説されています。従って、これを基準として設計するのがよいでしょう。

 なお、以上では、JIS 規格品のターンバックルブレースを対象として説明したが、必ずしもこれらを使用することに限定されているわけではなく、一般的な丸鋼を筋かい材として使用することは、建築基準法令や日本建築学会の設計規準に示された規定を守って設計されている限り問題はありません。しかし、このようなケースは、使用する鋼材の選定から始まって、ねじ加工、各種の付属金物の設計など非常に多くの項目について検討しなければならず、どこかでうっかりしたミスをすれば、それが致命的な結果に繋がる可能性もあり、JIS 規格品を使用し、上記の文献を参考としてガセットプレートなどを設計するのが無難です。

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